13Fishing(リール)
〇13Fishingのリールが2020年秋から国内販売開始です
“13Fishing(ワンスリーフィッシング)”という米国メーカーのリールを、2020年秋からラパラ・ジャパンさんが日本国内での正規販売を始めまして、ちょっと変わった物好きな当店でも取り扱わせてもらうことになりました。
「13Fishing?」と日本では馴染みのないブランドで私も知らなかったので調べてみたところ、2012年に米国フロリダ州クリアウォーターという場所を拠点に設立されたDQC International Corpという会社のブランドで、バスやフロリダ湾で海に浸かっての釣り(Wade Fishing)用のロッド、リール、ルアーなどを販売しているまだ比較的新しいメーカーさんでした。
と、まだ新しい米国のブランドですが、“CZB BEARING”という既存のボールベアリングではないポリマー製ベアリングを組み込んだリールや、ポップな色調のリールやロッドを発売していて本国では若い釣り人を中心に人気があるようです。日本でも米国メーカー好きな方はネットなどで見掛けられたこともあるのでは?
で、Rapala VMC CorporationがDQC International Corpの株式を取得して、米国以外での世界販売を行うことになり、日本でもラパラ・ジャパンが販売を行うことになったとか何とか…そのあたりの経緯は外国の釣具関係ニュースサイトで調べてみるとまた面白いところです。
今回日本での正規販売開始にあたって先ずはリール2機種から、ということで2019年発売の緑色の外観が目を惹く”INCEPTION SPORT Z”と、2020年のICASTで発表された最新の“CONCEPT Z SLD”が導入されました。
ブランド内の位置付けとしては”INCEPTION SPORT Z”がミドルクラス、“CONCEPT Z SLD”がハイクラスな感じです。
店での取扱い検討のため、米国大手のネット販売店から”INCEPTION SPORT Z”を自費購入してしばらく試してみたところ、
・個人的には派手な外装色はやはりちょっと気恥ずかしい…。
・でもリールの性能としては充分使える感じで結構面白いかも?
・分解をして内部を見てみると造作はしっかりしているので品質管理もされていそう?
ということで、店舗での取扱い条件などいろいろ検討した結果「…面白いかも?」と国内初期取扱いの10店舗に当店も加わった次第です。
なお、国内保障の修理などはラパラ・ジャパンではなく各店舗が行うということで、“リール整備が出来る店”が取扱店になっています…ということで異常があれば修理も頑張ります。
今後、他の機種やロッドも国内導入されたら面白くてええなぁ…ということで初期国内導入2機種の紹介です。
※※お知らせ※※
国内導入2機種の内、CONCEPT Z SLDも自費購入して試していたところ、キャスト時に異音が発生しました。
私が購入した個体の癖ならば良いのですが、機種として異音が発生しやすい要因があると問題ですので、当店では10月16日以降CONCEPT Z SLDの販売は当分見合わせることにしました。
なお、先に自費購入したINCEPTION SZについては、問題なく使用できておりますので販売を継続しております。
〇INCEPTION SPORT Z(メーカーHP→https://13fishing.com/inception-sz-1)
当店販売価格¥17,000+税
【メーカーHPでの紹介(機械翻訳から意訳)】
13Fishing“ INCEPTION Sport Z”は、ロープロファイルプラットフォームに他にはない素晴らしい機能を通常の3倍のコストを掛けて組み込んでいます。非常に優れた耐久性と飛距離のために、日本の浜井カットギア、CZBテクノロジー、アローヘッドラインガイド、特許取得済みのビートルウィングラピッドアクセスサイドプレートシステムなどの技術が組み込まれており、他のブランドでは同じ価格帯では備えられていない機能を、あなたは手にすることができます。
【主な仕様】
ギヤ比7.3:1/巻上量30in(76cm)/糸巻量12lb135yds(120m)/自重6.7oz(190g)/2CZB+5+1ローラーベアリング
※外装色はマットな明るい緑色です。
※製造は中国の工場で行われているようです。
【主な機能】※自費購入で試験使用しましたので使用、分解した経験?も踏まえて補足説明します。
・CZB Spool Bearing Technology
スプール軸の受け部に入っているポリマー製のベアリング(ブッシュ?)で、ボールベアリングで起こる異物が入ったり錆びたりするトラブルをなくすというのが売りです。
コンセプトゼロベアリングの頭文字で”CZB”ですが、メインシャフトやメカニカルの軸受けなどトラブルが少ないであろう箇所は通常のボールベアリングが入っていますし、“ベアリングを使っていないリール”というわけではありません。
・6-Way Centrifugal Braking System
スプールのブレーキはメカニカルと6点遠心ブレーキになります。
遠心ブレーキの羽根の出し入れ数は、スプール側面に取り付けられているブレーキユニットのダイヤルを回して調整する仕組みです。
・Beetle Wing Rapid Access System
遠心ブレーキはサイドカップを開けての調整になり、開放時にカップの脱落防止でヒンジがついているタイプになります。
「甲虫の羽根みたいにパカッと開くよ」ということのようです。
・18 lbs Max Drag
ドラグワッシャは多段式ではなく黒い合成樹脂?(ポリマー?)の極厚手一枚リングでしたが、最大18lb=8kg超えはなかなかの強さ。
ドラグホイールにはクリックがついていますが(軸側に別部品組付け)、ドラグ自体にクリッカーはついていないのでラインが出るときに音はしません。
・Instant Stop Anti-Reverse
ワンウェイローラーでの逆転止めです。
ボディに固定ではなく取り外せるので分解整備好きには助かります。
・Japanese Hamai Cut Gearing
日本の工作機械メーカー浜井産業の機械を使ってギヤの切削をしています。
米国では他メーカーのリールでも浜井産業製工作機械を使っての加工は “精度の高さ”をアピールする謳い文句のようです…知らなかったけれども浜井産業さんの信頼性は世界的に有名みたいです。
・High Spin Spool Shaft
どのような加工がされているのか詳しくはわかりませんが、スプールシャフトが灰色で硬そうな雰囲気です。
なおスプールを測ってみると34mm径で自重は13.0gした。
・Arrowhead Line Guide System
ラインガイドが縦の楕円形でやや角をもたせたデザインなので、鏃っぽい形状からアローヘッドかと?
ラインの出は良いように感じます。
・Integrated Hook Keep-R
リールフレームのセンターにルアーを掛ける方がありますが傷がつく…だったら掛けられるようにしてしまおう!とセンターに樹脂パーツを付けてフックキーパーになってます。
結構便利かも?
・EVA Tech Knob
硬質EVA製の厚手パドル型ハンドルノブで、13Fishingのロゴマークがノブ面に型押しされています。
・Ocean Armor2 Saltwater Protection Process
海水使用も可能な仕様ということのようですが、具体的にどのような仕様なのかよくわかりませんです…。
ボディの水抜き穴や機関部側スプール軸受けの高めの土手などで、通常使用時の海水侵入の防止と使用後の洗浄を容易にしているということかも?
・Alminum Line Guide&Handle Knob Caps
ラインガイドとハンドルノブキャップはアルミ製のようです。
ちなみにボディフレームもアルミ製のようです。
メインギヤの材質はHPに書かれていませんが、銀色で軽かったのでアルミニウム合金(ジュラルミン)製?
・Hard Anodized Gen.2 Worm Gear
レベルワインドを動かすウォームギヤは硬質アルマイト加工されているようです。
なお、ウォームギヤ両端の受けはベアリングではなく樹脂カラーでした。
・Micro Click Cast Control
メカニカルブレーキのキャップを回すとクリック音がします。
…小バネと小ピンが入っているので分解好き泣かせの機能です。
【使用してみての個人的な感想?】
この機種は取扱いを決める前に購入して(右巻きモデル)試験使用していましたので、使ってみての個人的な感想です。
・リール本体も軽く巻き感も軽めだけども、意外にボディのシッカリ感はあってパーミングもしやすい。
・中国製で本国価格もミドルローのクラスの割には内部のバリもなく造作は良い感じがする。
・外観の“明るい緑色”は好き嫌い分かれそうだけど…慣れるとコレもありかも?
・遠心ブレーキらしい投げ感だけれども、ブレーキの効きは思ったよりマイルドでピーキーさはない感じ。
・遠心ブレーキの調整が蓋を開けてなので面倒だなぁと当初は思っていたものの、遠心は現場初期合わせ以降ルアー交換時のメカニカルブレーキ調整で意外に大丈夫な感じがする(旧ABUの2点遠心慣れしているだけかも?)。
・キャスト時のスプール回転が普通のボールベアリングは硬質な転がり感があるけれど、スプール軸受けのメインがCZBだからかスプール回転が柔らかい感じがする。
・軽いルアーは苦手で10g前後からが投げやすいのがアメリカのリールな感じ? 飛距離はそれなりな感じで大遠投の釣りには向いていないけれど、中近距離で使用する分には扱いやすいリールだと思う。
・アメリカの釣り人は太い糸を使う印象があるけれど、他メーカーも含めて12lb100yds少々のスプール糸巻量が多いのは岸釣り大遠投よりボートからの中近距離戦が多いから?
・濁りが出る河川でのスズキ狙いで使っていると、レベルワインド周りから泥水の侵入が若干あるものの機関部やブレーキカラーへの影響は今のところみられないので意外に対水性はよいかも?
・でも…レベルワインドのウォームシャフトに侵入した泥の影響で、シャフト両端のカラー接触部は表面の摩耗が始まっているので硬質アルマイト加工も負けてしまっている感じ。
・分解整備は今どきの普通の平型リール程度の手間で変わらない感じだけれども、平型リール一般のレベルワインド周りの整備性の悪さはどうにかならんものかなぁ?一番汚れる箇所の気がするのですが…。
〇CONCEPT Z SLD(メーカーHP→https://13fishing.com/concept-z-sld)
当店販売価格¥28,500+税
【メーカーHPでの紹介(機械翻訳から意訳)】
話題騒然!是非ご覧ください!オリジナルのCONCEPT Zは、革新的なCZBテクノロジーで業界を揺るがしました。設計、エンジニアリング、そして素材の最先端を前進させることが、“Z”の使命です。新しいGenII CONCEPT Z SLDは期待を裏切りません。新しい体験は、キャスト時の調整に最適な場所にある新しい“Slide Magnetic Cast Control System”から始まります。風下に、次に風上にと交互にキャストする際に、親指をフリックするだけでブレーキを制御することが出来ます。低摩擦の遠心ブレーキと磁気スライドブレーキの組み合わせで、ピッチング、フリップ、通常のキャストと自由に切り換えることが可能です。腐食のないCZBベアリングとアドバンストポリマードラッグシステムは、新しく開発された堅固な鋳鉄フレームとサイドプレート内に配置されています。この構成は、技術革新の新たな基準となるものです。
【主な仕様】
ギヤ比6.8:1/巻上量26.9in(68cm)/糸巻量12lb125yds(114m)/自重6.73oz(191g)/6CZB+1ローラーベアリング
※外装色は艶のあるソリッドなグレーにオレンジのパーツの組み合わせです。
※製造は韓国の工場で行われているようです。
※本国ではRHがギヤ比6.8、7.5、8.3の3モデル、LH7.5の1モデル構成ですが、国内導入はRH、LHとも6.8の仕様です。
※CONCEPT Z SLDにはシリコン製のリールカバーが付属します。
【主な機能】※こちらは自費購入が出来ていませんので、検品で確認が出来た範囲で補足説明します。
※2020年10月12日にRHを自費購入して分解と試投をしましたので追記します。
・Slide Magnetic Cast Control System
この機種で初搭載の機能で、マグネットブレーキがスプールハウジングの機関部側についています。
磁石数が少なく小型なので遠心ブレーキの補助的なブレーキではないかと思いますが、向かい風などの条件では助かる便利機能だと思います。
・CZB Spool Bearing Technology
スプールの軸受け部はCZBベアリングです。なお、スプール径は32mmで重量は16.6gでした。
・Hi-Tech Cast Iron Carbon Frame and Side Plate Construction
フレームとサイドプレートは丈夫な鋳鉄製のようです。
追記:鋳鉄製というより軽量さと丈夫さで各メーカーが採用しているカーボンと金属、合成樹脂の混合素材のようです。
・Ti-Armor Alminum Hamai Cut Drive Gear
ドライブギヤは浜井産業の機械で切削したチタンコーティングのアルミ製のようです。
・20lb Advanced Polymer Drag System
SPORT Zより更に強い最大値20lbのドラグ…比較で中を見てみたいところです。
追記:ポリマー製ワッシャの複式タイプでした。
・Alert Drag Clicker
ドラグクリッカーも搭載です…ギヤに小バネと小ピンで組まれているならこれも分解好き泣かせ?
追記:上の写真の通りギヤのワッシャに組み込まれるタイプで助かりました。
ただ…ドラグホイールのクリックはこの苦手なタイプだったので、分解整備時に失くしそうだと私物の方は取り外してしまいました。
・Zero Ball Bearings(6CZB Bearings,1Dead Stop Anti-Reverse)
ワンウェイローラー以外は全てCZBベアリングで通常のボールベアリングは使っていないようです。
そう言われて巻いていると、ボールベアリングの硬めの巻き感とは違ってフラットな感じがするような?
追記:CZBはスプール軸受け両側に各1の他、メカニカルブレーキ内1、メインシャフト下端1、ハンドル内各1が入っていました。
・Arrowhead Line Guide
鏃型の形状のラインガイドでラインの放出、巻取りの抵抗を軽減しているようです。
追記:説明が分かりにくいので…こんな形状です。
・Reinforced Clutch Cam
レールサポート付きのスロットカムがクラッチ操作時の故障を防ぎ耐久性を高めているようです。
・KeepR Integrated Hook Keeper
リールフレームのセンターに樹脂部品をつけてフックキーパーにしています。
・Generation 2 Hard Anodized Worm Shaft
レベルワインドを動かすウォームギヤは硬質アルマイト加工されているようです。
・Low-Friction 6-Way Braking System
6点式の遠心ブレーキで、ブレーキ動作時には振動を抑える機能が組み込まれているようです。
・Beetle Wing Rapid Access Side Plate
遠心ブレーキはサイドカップを開けての調整になり、開放時にカップの脱落防止でヒンジがついているタイプになります。
・Trick Shop Compatible
メーカーオプションの加飾パーツやスプールを組み合わせられるということなのですが…オプションパーツの日本導入は今のところ未定です。
…「だそうです」の説明ばかりなので、これはやはりCONCEPT Z SLDの方も早く自費購入して弄ってみないとあかんかなぁ。
…と、いうことで商品を自費購入してしまいましたので、まだ短時間ですがご近所の溜池で投げてみての使用感です。
【使用してみての個人的な感想?】
・CZBで巻き感自体もフラットに変わるかも?と思いましたが、ワンウェイローラーとレベルワインドのウォームシャフトの巻き感触がやはり大きいので然程の変化は感じませんでした。でも…注意深くハンドルを回しているとやはり何か違う感触がするような気も?
・CZBの経年耐久性には期待したいところですが、巻き感異常の主因になるのはワンウェイローラーということが多いので結局どんなものか…これはしばらく使用してみないとわからないので今後の宿題?です。
・スプール径が32mm(INCEPTION SPORT Zは34mm)とやや小さめ寄りですが、深溝なのでやはりルアー重量は10g前後からが扱いやすいように感じました。でもラインの出初め感は結構よく、ルアーが低めに飛んでいくように感じました。
・秋の風が巻いているような場所で投げていましたが、向かい風時の保険で少しスプールにブレーキを…というような時に”Slide Magnetic Cast Control System(SLD)”は手早く操作が出来て効果もあったので便利に感じました。ただ、私は右投げ右巻きのキャスト時には古い親指位置なのですが、LHモデルの場合は親指位置がSLDの位置と重なるので投げにくいかも?と思いました。(写真は左手で持って右投げ時の鏡で真似をしているものです)
・グレーにオレンジの差し色の個性的な外観と、なかなか便利なSLDのマグブレーキ、そして使っている人が少ないという珍しいリールが好きな方には”あり”かなぁ?とも思いながら、お値段がなかなかなのでどうかなぁ…。